すすき野原で見た狐(中巻)/板谷みきょう
。しかし喜びも束の間、化けられるのは与一の姿だけだった。
「やっと曲がりなりに、人の姿に化けられる様になったというのに…… よりによって、与一どんの姿にしか化けられぬとは……不思議なこともござっしゃる……」
狐は、自分の努力が形になったことを喜ぶと同時に、他の人間には化けられない哀しさを胸に秘めた。その姿を見て、与一は大喜びした。だが、自分の姿でしかないことに、複雑な心境も湧き上がる。
「おーい狐よ!わしだ。与一だ!めでたいなぁー!祝いに、イチゴを持って来るからな。なぁーに、心配はいらん。せせらぎの峰の?季節問わずのイチゴ?だからなぁー!祝いじゃ、祝い。必ず行って採ってくるからな
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