すすき野原で見た狐(中巻)/板谷みきょう
 
に見えない形で支え合い、心をそっと温めていた。

第三章:試練の風と嵐
ある夜、強風が野原を吹き荒れ、芽を押し倒していく。与一は旅に出ており、社にはいない。残されたのは、狐一匹だけだった。

狐は化けた姿のまま、倒れた芽を支え、立たせる。耳や尻尾の化け残りを気にする余裕はない。ただ、芽を守りたい一心で動く。

「……わしだけで、守らねばなるまいの……」

焦りや苛立ちはあったが、それ以上に芽を支えたいという衝動が勝った。嵐の中、孤独な努力は自然の猛威に耐え、狐は無言で芽と向き合った。

第四章:化けられる喜びと哀しさ
嵐が去った後、狐はとうとう人間に化けられる日を迎えた。し
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