すすき野原で見た狐(中巻)/板谷みきょう
 
第一章:芽の成長と村の冷笑の悲哀
春先、ジャガタラの畑に小さな緑の芽が力強く伸び始めた。

与一は毎朝、指先に土の冷たさを感じながら、芽を揃え、水を注ぐ。汚れた手は土と一体化し、そっと声をかける。

「大きく、きくなって、必ず、必ず、実を結んでくれ。」

通りすがる村人の冷ややかな視線や嘲笑も、与一の背を揺るがせはしなかった。その背中は、孤独に耐える杭のようにまっすぐだった。

夜、狐は木の葉を頭にのせ、月明かりの下で回る。与一が置いていった葉を試し、耳や尻尾の化け残りを直そうと必死に努力するが、なかなか思うように化けられない。焦燥感が胸を締めつけ、痛みが走る。

それでも、
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