すすき野原で見た狐(中巻)/板谷みきょう
 
も、遠くの社で孤独に耐える与一の姿を思い出すと、胸の中に小さな決意が芽生えた。

「自分の頑張りは、いつか、誰かのためになっているのかも知れないのう……」

第二章:初めての小さな奇跡
芽は少しずつ力強さを増し、与一の孤独な努力に微かな変化が現れた。ある朝、畑の一角で特に濃く瑞々しい芽を見つけ、与一の目が熱く光る。村人の冷笑に耐え、孤独な努力を貫いた者だけが得られる、最初の希望の兆しだった。

狐もまた、葉の工夫や回り方を微調整するたびに、化ける姿が滑らかになっていく。鏡のような水面に映る自分の姿に、わずかに耳を残すものの、これまでにないほど人間らしさを帯びた。孤独な努力が、互いに見
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