すすき野原で見た狐(上巻)/板谷みきょう
 
スモノ……と決めつけたのは、誰でござっしゃろう……」
悔しさと情けなさが、胸の奥に重く沈んだ。
第二章:奇妙な畑と小さな贈り物
与一は社の周りの土地を耕し、ジャガタラの種を植えた。誰も手伝わず、誰も信じない。
それでも毎日、黙々と土をならし、芽の気配に耳を澄ます。
作業を終えると、与一はこっそり雑木林へ向かった。狐が化けるたび、葉っぱが破れていたことに気づいたからだ。
クヌギ、ナラ、モミジ。形のよい葉を選び、狐の足跡のこぬ場所へ、そっと置いては自分の足跡を、枝で払って消す。
狐はその葉を見つけるたび、「……ふむ」と、ほんの少しだけ目を細めた。
喜びは小さく、声にもならぬ。だがその静
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