すすき野原で見た狐(上巻)/板谷みきょう
 
して……引いておる荷は、いったいなんじゃろう……とんと見当がつかんのぅ……」
狐の目には、ぼろをまとった男が、寂れた社へせっせと何かを運び込む姿が映った。
愚かにも見え、どこか純朴にも見える、不思議な男。
やがて与一は村人に声をかけ、話しかける。遠い異国の地で飢えを救った“ジャガタラ”の種を植えるという、夢のような物語だった。村の年寄りたちは誰も取り合わず、鼻で笑った。
狐は、そのやりとりを見て、ふと胸がちくりとした。自らも、化ける練習をするとき、似たように笑われた気がしたからだ。
狐は夜な夜な、木の葉を頭にのせて回る。だが耳は残り、尻尾はのぞき、形は歪む。
「狐ハ、人ヲ騙シ、化カスモ
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