鬼吉と春一番(修正版)/板谷みきょう
 
の名は、吉って云うんだ。
ふつうの男の子ども、だったんだけんど、
ある晩、あやしげな熱に、取り憑かれたんだと。
したら、あの、デコの両方のこめかみのトコの少し上あたりだ。
二本のツノが、かちり、かちりと生えてしまったんだと。

村人たちは、そりゃあ、びっくりこいて驚くべ。おっかねがってよ。それ、夜中に集まってよぉ、額ば寄せてひそひそ囁いたんだと。
「ツノぉ生えた子は、きっと。鬼になる。」って。
――昔っからの、言い伝えだんだもの。
村人たちは、吉のことば“いぎょう”って、恐れてよぉ、
村から追い出そうとしたんだと。“ムラハチブ”ってのぉ。

したけども、吉には、幼馴染みの澄
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