鬼吉と春一番(修正版)/板谷みきょう
の澄乃がおったんじゃ。
澄乃は、世間の善し悪しなんぞ解らんべ、けがれねぇ心の娘だもの。
二人は「ふもとの原」や「ぬらくら川」で、村のわらしっこと仲良く遊んでたんだ。
だども、吉のツノのせいで、だんだんと、ちろりちろりと吉を避けるようになったんだ。
そりゃあ、澄乃は悩んだべさ。胸のずっと奥だ、魂が、きりきりと痛むほど悩んだべ。
吉と遊びてぇ。んだども、もし、えんがちょ切られたら…吉ば助けることもできねぇくなるじゃ。
澄乃は、自分のことより、吉のいのちば、考えてまったんだべな。
“ムラハチブ”になれば、誰も吉に近づけなくなるべ。
そりゃ、寂しすぎるべさ。
いのち奪うくれぇの“コド
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