鬼吉と春一番(修正版)/板谷みきょう
ぐるうりと、ぐるり山に囲まれた、この谷間の村だで。
寒い季節になると、ほれ、屏風山から山おろしの風が、
「ごうごうっ、ごうごうっ。」って
まんず烈しく唸るんじゃ。
その、ずっと向こう、白むくのせせらぎの峰に、
桃色のおっきなお月さまが、ぽぉんと浮かんでおる。
ちょうど、ばっちゃが、お前くらいの年の頃じゃった。
その晩、まんだらの静かな夜に、ばっちゃのばっちゃが、そっと話してくれたんじゃ。
「布団さ、しんと入って、だまって聞いてれ。
まなこさ閉じて、心を静かに聞いてれって。
これは昔々の、もう、ずうっと古い話だんだ。
この村に、ツノの生えた子どもがおったのよ。
その名
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