悴んだ/森 真察人
 
も悴ませて這入ってきた
この森だというに
木々はこの寒さから僕を守らない
西を向くと かの巨体の顔がよく見えて
おお それはかの少女だった……

この巨きな少女は
その巨躯(きょく)に合わせてあつらえられた逆さの十字架に
はりつけられているのだが
しかし両の眼を確(しか)と見開き
この森を見ているのだった
この空と同じ碧色の眼を確と見開き……

やがて少女は
打たれた釘に両の手の甲をねばつかせながら
上空へと倒れはじめた
そのことは少女にとり
救済でないと僕には思われた
なんとなれば僕は少女の肌が
骨のように白い今日のような日を
かつて少女と
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