全行引用による自伝詩。 03/田中宏輔2
・ファーマー『太陽神降臨』12、山高 昭訳)
一番興味のあることを見落していた。
われわれは毎日死ぬのだということを。忘却がはびこるのは
乾いた大腿骨の上ではなく血のしたたる生においてなのだ、
そして最高の過去もいまや皺くちゃになった名簿や、
電話番号や黄色に変色したファイルなどの薄汚れた積重ねだということを。
わたしは小さな花や肥った蠅に
喜んで生まれかわってもいいが、だが決して、忘れることはできない。
私はこの世の生活の
憂鬱(メランコリー)や優しさ
のほかは永遠性を退けてやるつもりだ。情熱と苦痛。
宵の明星の向うにだんだん小さくなってゆくあの飛行機の
濃い赤
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