全行引用による自伝詩。 03/田中宏輔2
 

 こわくない、とラムスタンは自分に言い聞かせていたが、それは自分への嘘、あらゆる嘘の中で一番簡単な嘘だった。
(フィリップ・ホセ・ファーマー『気まぐれな仮面』28、宇佐川晶子訳)

 窓の外をながめているうちに、ぼくはフッとおかしなことを考えた。
 この瞬間は、このときかぎりのものであるが、しかし永遠にここにありつづける、というようなことを考えたのだ。──ぼくたちは錯覚しているのだが、時間は決して過ぎ去っていくものではない。どんな短い瞬間にしても、永遠の一部であることに変わりはなく、そして永遠という言葉が不滅を意味しているのであれば、瞬間もまた消滅してしまうはずがないではないか。
 そ
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