全行引用による自伝詩。 03/田中宏輔2
そんなことを考えたのである。
時間はつねにそこにありつづける。うつろい、変化していくのは、時間ではなく、ちっぽけな生き物であるぼくたちのほうなのだ、と……
今、この瞬間、ぼくが眼にしている夏の光、耳にしているセミの鳴き声は、永遠にここにとどまる。そして、ぼくだけが老いていき、死んでいくのだ。
(山田正紀『チョウたちの時間』プロローグ)
神とことばを交わすことができるのは、神と同じ、異端者、アウトサイダー、そして異邦人ということになるだろう。これが地獄の驚異だ。
(フエンテス『脱皮』第二部、内田吉彦訳)
巧妙な芸術家というのは、大変なはったり屋で、いつも先回りをし、自分
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