人妻温泉旅館/atsuchan69
休みをもらって大阪からクルマで来たことを話すと、「港に停めてはるんですね。……それなら、なおさら、夜道は危ないですから」と微笑んだ。
その夜、私は客間に布団を敷いてもらい、波の音を聞きながら眠りについた。薄い襖の向こうに、人の気配があった。やがて夢の波間に、柔らかな乳房と唇が浮かんでは沈み、まぶたの裏に残り続けた。
釣りと記憶
それから、私は月に一度か二度、車を走らせてあの入り江を訪れるようになった。釣りが表向きの理由だが、本当は彼女と娘に会いたかったのだ。
春にはメバルが群れを成し、夏は陽射しの下でアジが光を散らす。秋はカワハギの肝を肴に酒を酌み交わし、冬は火鉢に手を
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