リトルブレイン/おまる
 
それよりも、店長の老人と、店番の女の親子の様に仲が良さそうな姿や、煙草を燻らせながら静かに笑っている中年のサラリーマン、クレオパトラみたいに鼻の高い、トレンチコートを着た女が、英語の雑誌を読んでいたりするその様や、その一々が、どうしようもなくおれを孤独にする。孤独。そう、これこそが「東京らしい」とおもう。彼らが航海を生業としたクルーだとしたら、おれはその傍らで、唯漂流しているだけのクラゲの如き、かよわい存在だ。それを最も強烈に感じさせる場所こそ東京の名を冠するに相応しい。

仕事中は、雑談をほとんどしない。それはみんなも同じであった。そんな自分自身について、彼らがどうおもっているのか、知りたく
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