リトルブレイン/おまる
 
たくもない。入社したての頃は、ただの世間知らずの青年で、無欲と真面目さだけが取り柄だった。この生活に慣れてくると、文学にハマり、悪い遊びを覚えて、出世レースはそっちのけになった。「これではいかんな」と内心気づいてもいたのだが。オフィスは、2つの駅の中間にあったので、どちらの駅から出ても、約15分ほど歩く必要があった。辺りは全てがコンクリート張りの、デコボコの地形で、高所に団地や住居街や公園があり、そこから急な階段を降りて、すぐ目と鼻の先に、大きな車道があった。交通量も多い。小さな子供が、一人で公園から道路の所まで降りていったら大変じゃないかと想った。親が目を離したすきに道路に飛び出て、事故で死ぬ事
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