リトルブレイン/おまる
 
ある。相手がおれのそうした暗く鬱屈した状況や、卑屈な性格も含めて、計算ずくでやっているのはあきらかであり、とどのつまり舐められているのだとしても、初っ端から人間関係を御破算にはしたくなかった。もっとも、最初からこんなふうに受け身になったのがマズかったのだ。ここで毅然とした態度で拒否すれば、やつの鴨にならずに済み、また関係性も大きく変わっていたに違いない。この出来事は、おれが「受け身な奴」かどうかはっきりさせるために奴が仕掛けた”賭け”だったのだ。そして奴はギャンブルに勝ち、おれは自覚もないまま、負かされたのだ。

あのころは山手線に乗ると、まるで荘厳華麗な極彩色の絵巻が目の前を流れるように、街
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