こころのかける  涙の一滴(ひとしずく)/洗貝新
 

失った者たちへの哀しみ
憎しみと怒りに滾る波の泡
画面を通して
誘われるままにもらい泣きする感動
己を悔い戒める、自責の念

たった一つの大きなテーブルの席で
一人だけ嗚咽する兄を怪訝な顔で眺めていた。
娘の婚姻という日には相応しくもない暗く俯いた表情で
それは祝福とともに浮かべる涙や
寂しさのあまりに出てくる感涙だとも思われなかった。
親として目一杯のことをしてやれなかったという
自責の念に駆られた悔恨の涙ではなかったのか
彼は過去の栄光を捨てきれなかった。
色褪せた現実は自蔑という思いに囚われ
腫れあがる瞼を辿りながら私に伝わってきた。

そのことが理解でき
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