【わが短歌・俳句入門】<女性歌人と海>/藤原 実
栗本京子(S29〜)
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しかし、このへんになると何か歌の中の海の存在感が大きく変わってきているように思うのです。なにか海が生命体というより、イメージとしての海という面が強調されてきているのではないか。そう考えてあらためて冒頭の今野寿美の歌をみると、鮮やかすぎて海の実在感というのは稀薄なようにも思えてきました。じっさい今野には、
だまし絵に騙されてゐるいつときが思ひのほかの今日のしあはせ
という歌があったりするのです。これがボクと同世代の昭和三十年代生まれになるとどうだろうか。
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ふるさとは海峡のかなたさやさやと吾が思はねば消
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