【わが短歌・俳句入門】<女性歌人と海>/藤原 実
澄んだ鏡の中からは
秋がしづかに生まれてくる
(竹中郁『晩夏』)
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に通じるような夢と現実のひとつになったポエジーを感じます。
身の丈ほどもある一枚窓には彼女の全身が映っていたでしょう。そして、それは海の風景と重なり合っていたにちがいない。海鳴りは彼女の胎内の音でもあるのではないでしょうか。
斎藤が待っていたものはじつは自分自身の内にあるものではないのか、というのが今野寿美の回答です。海は母性の象徴でもあります。そこで『現代の短歌』から海を歌った作品を抜き書きして斎藤史への回答集としてみようと思います。
さて今野寿美は昭和二十年代の生まれです。まず斎藤の同世
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