「文学極道」への弔辞(再校正済み編)/室町 礼
合された思想もないまま思いつくままに泡のように浮か
び上がっている。それぞれの行がいかにも意味ありげで、
たとえば「蛇が卵を飲み込むように卵が蛇を飲み込んでい
た」という通俗的な思想はニーチェのようなものを齧って
虚無のような気分をもつこの作者の一過性の文学青年病を
あらわしているのかもしれない。「蚕は毒素のベッド 弾
力のある歯が根を足がわりに輪を作った」なんかはもう意
味不明で多分本人にだけ了解できる世界の一端を表明して
いる。ただ、
そうであってもここから意味を掬うことは読者の自由だか
ら幾らでもそれらしい解釈はできる。おフランスの構造主
義だの現象学だのロシアの形式主
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