「文学極道」への弔辞(再校正済み編)/室町 礼
 

各賞を総なめにしたのですが、つまり「言葉の前景化」と
いえばこの出来事もロシアフォルマリズムのいう「前景化」
なんです。ロシアフォルマリズムなんて聞き齧りでよく知
りませんが。名指しできないものを現前化する、それは難
解な隠喩でもなんでもなく言葉の選択と転換にある。その
ことが新しい何かを作り出すのではなく、もともとそこに
あるけど目に見えていないものを表にひきづりだすという
詩の価値のひとつの側面でしょうね。

「過去」などという言葉はもちろんあたりまえ普通のこと
ばです。それが或ることばと或ることばの間に置かれると
き或る関係性が生じる。選択と転換といいましたが、これ
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