LIVING IN THE MATERIAL WORLD。/田中宏輔
出てきて、耳が出てきて、花がのびて、唇が開いた。やがて、顔が現われ、手足も現われた。自分を傷つけながら、さらに
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成長していった。そこらじゅうに傷口がのぞかれたが、焼けただれた喉が、もっとも美しかった。「傷口の花」か、なかなか見ごたえのある傷口だった。こんどは「癌の花」を買ってこよう。
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「真っ赤に焼けた鉄の棒を腕や胸や顔に押し付けられた男の悲鳴」という種を買ってきた。鉢に植えて育つのを待った。さいしょの数日は、単なる息をする音しか聞こえなかったのだけれど、三日目の夜中に突然、絶叫する声がして飛び起きた。たしかに真っ赤に焼けた鉄の棒を押し付けられ
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