LIVING IN THE MATERIAL WORLD。/田中宏輔
 
と、齢をとって思う。幸せは、ほっておいても壊れるものなのだ。どれだけ壊さずにおいておけるのかが技術なのだと、いまのぼくは思う。そうだ、幸せは技術なのだ。いつからでもはじめられる技術なのだ。


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手話ができるようになるまで、どれくらいかかるのだろうか。手話で詩を伝えることは可能だろうか。ふと思いついただけだけど、将来、手話通訳をしたいと語る青年の話を聞いて。こころにとめておこう。


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新しい花の種を買ってきた。大きめの鉢に植えると、数日で、手足が土の間にのびていくらしい。たしかに、ジリ、ジリという音が昼間、聞こえた気がした。その音がして二日後に目が出て
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