白髪/鯖詰缶太郎
 
退勤を押す
瀝青が泡沫を吐き出す湿度をまといながら
誰もが楽園を見つけだせなかった旅人のように
骨格を曲げている

さびしい さびしい さびしい さびしい

柔軟さを失いながら猫は歩いている
もうすぐ二本足で歩けそうだ
なにもかも恐れを知らない勇気と引き換えに
壁は乗り越えられないという知識が
右脳にも左脳にも群生しはじめて
辺りは暗くなり
私は白い絵の具が切れているのだと
ようやく気付く

なにをそんなに白く染めようとしたのだろう
誰のために聖域らしきものを
白く塗っていたのだろう
途中から疑い始めた芸術とやらは
若い自分がなりたいと思わなかった
拳を真
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