running water/ホロウ・シカエルボク
、二度と聞くことは出来ないのだ、と、俺ははっきりと悟った、それから、異常とも言える不安感に襲われた、訳がわからなかった、たった一度何かのタイミングではっきりと聞こえた音をもう聞くことが出来ないというだけで何故こんな気分にならなければならないのか?俺はそもそもその音を求めていたわけではない、普段なら聞き逃してしまうような音なのかもしれない、そういう音が様々なタイミングのせいでクリアーに聞こえたというだけで何故こんなに気持ちを乱されなければならない?…しばらくの間どうすることも出来ず座り込んだまま茫然としていた、それは喪失感といってもよかった、俺は間違いなく何かを失ったのだ、たまたまその音を聞いてしま
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