反バベル/岡部淳太郎
 

これによってその町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた。(「創世記」第11章第9節)



その昔
僕たちは集まっていた
集まって 互いのなかの光に感応し合っていた
その輝きは 天にまで届くかと思われた

それは とおいとおい 大昔のこと
まだ僕たちの言葉が通じ合っていた頃のこと

それからある大きな力によって
僕等は離ればなれになった
そして世界中に散らばり
いまではもう 君が何を思い
何を話そうとしているのかもわからない

僕の言葉ももう
君には届かない
だが 僕はいまでも
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