水中に居ると何かを思い出せそうな気がする/ホロウ・シカエルボク
 
りのはずだった、もうしばらく、例えば太陽が落ちて夜が穏やかな風を運んできてくれるまでここでこうしているのも悪くない、ユニットバスなのでトイレだって目と鼻の先にある、時計も携帯も部屋のテーブルに置き去りだ、でも重要な連絡がやって来る心当たりはまるで無かったし、近頃じゃ取る必要の無い電話ばかりで、だから放っておいてもなんら問題は無かった、夜になって確認してからでも充分間に合うくらいの話しか俺のところにはやって来ないのだ、俺は大きく息を吸って、バスタブの海に沈んだ、耳に水が流れ込むような音がして、すぐに息苦しくなる、バスタブは肌色をしているのに、水中で見つめる景色が必ず青いのは何故だろう?いくら考えても
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