水中に居ると何かを思い出せそうな気がする/ホロウ・シカエルボク
ても答えは出そうになかったし、誰かに聞いたところで教えてもらえるような議題でも無かった、自分の口から洩れる泡の音以外はどんな音も存在しない水の中に居ると、いつも遠い記憶を思い出すような気がしてそこに居ることにこだわってしまう、でもそれには限界がある、どんなに頑張ってもそれを思い出すまで潜っていることは出来ない、水面に出て息をしなければならないのだ、もしかしたら思い出すべきものなどそこにはなにもなくて、存在し得ない場所に意味を求めているだけなのかもしれない、存在したことが無い場所への憧れのようなものなのかもしれない、逃避系のロックソングが皆、呪文のように口にするここではないどこか、これもそんなものの
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