雪の跡ー回転を想う/詩乃
 
白色の世界が いま ここに
asphalt を 微かに蔽う
残るタイヤ痕
自転車で坂を駆け下りながら見る
幾分か前に 冷徹な鉄の塊が 駆けた跡
60?/hで駆動する一瞬
鉄塊が迫る
轢き殺される
豪転に巻き込まれる
白い絶叫 白い血飛沫 白い残骸
それは跡 アクセルの跡 加速の跡
物体的前進 空間的前進 時間的前進 精神的前進
回転を見よ 廻転を見よ 回天 廻天 
その渦に 呑まれよ 身を委ねよ
外縁から吸い込まれるように中心へ 軸心へ
私が廻る世界が廻る万物が廻る
廻る廻る廻る廻る
停滞した世界 平坦な世界から 脱獄せよ
大気の淀んだ直方体から 逸脱せよ

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