夢のあと/栗栖真理亜
 
出した。
(まだ僕にはやりたいことがある)
こんなことに構っている暇はない。
僕はレコーダーからカセットを取り出しテープをすべて手に巻き取ると、近くのゴミ箱に放り込んだ。
おそらく、これ以外にもダビングされているものが何個かタツミさんの手元にあるだろう。しかし、これは今まで言いなりの僕とは違うということを示す為の意思表示。
僕はタツミさんとの想い出が残る稽古場を立ち去った。

それからしばらくして僕にテレビ番組の仕事が回ってきた。「現代用語の基礎体力」というバラエティ番組だった。
この番組のレギュラーはほとんど、そとばこまちの劇団員が占め、他の小劇場出身の者もチラチラと顔を見せた。
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