熊のフリー・ハグ。/田中宏輔
 

 おいらのことをお嬢さんだと思って
 それで
 縄でくくられて
 ぬるぬるした鼻息の荒い毛むくじゃらのタコのような不在の猫がニャンと鳴く」
お好み焼き屋のオヤジがタバコを道端に捨てて
つま先で火をもみ消した
バケツをさげたオバンがまたやってきた
「あたしの哲学によるとだね
 あんた
 運が落ちてるよ」
それを聞くなり
お好み焼き屋のオヤジが
バケツを持ったオバンの顔をガーンと一発殴ろうとしたら
反対に
オバンにバケツでどつかれて
頭を割って
さあたいへん
どじょうが出てきてコンニチハ
頭から
太ったうなぎほどの大きさのどじょうが出てきたの
どうしようもない
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