熊のフリー・ハグ。/田中宏輔
ないわ
お好み焼き屋のオヤジは道端にしゃがんで
頭抱えて
思案中
「ところで
明日の天気は晴れかな」
ぎらぎら光るぬるぬるした鼻息の荒い毛むくじゃらのタコのような不在の猫がニャンと鳴く
「晴れ
ときどき曇り
のち雨
ときには豹も降るでしょう」
だれもがそう思いこんでいる
気がついたら
6時50分だった
ニュースが終わるよ
終わっちゃうよ
猫は不在である
というところで
人生の達人ともなれば
自分自身とも駆け引き上手である
勃起が自尊心を台無しにすることはない
理性に判断させるべきときに
理性に判断させてはいけない
わたしが20代の半ばくらいのと
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