去るものは追わぬ、イタリア人のスケッチ/鏡文志
 
、今度はスプーンをスープの上で大袈裟にかき混ぜ、ナポリタンのアンポンタンにこう言ってやった。
「つまり、世の中のあらゆる種々細々の神様は全体を俯瞰することはないが、言霊の世界のおける神様は全体を包括して語るため、欲張りで偉そうだってことかい?」
ナポリタンのアンポンタンは、話に夢中でピッツァにタバスコをかけ忘れたことを後悔しながら頭を掻きながら、私にこう言った。
「そうかも知れないが、サッカーにはその言霊が必要かも知れないけれど、言霊にはサッカーが必要ないんじゃないだろうか? 全体にとって部分は、なければ他のものでも代用可能なのでは? しかし、部分にとって全体は不可欠だ。そう思うから詩が偉そ
[次のページ]
戻る   Point(2)