深紅の蜜/ホロウ・シカエルボク
 

肉体を極小のコンカッセにして、焼けたトタン屋根のプライパンで焦げるまで焼いたら一気に口の中に捻じ込む、硬い食感とハッカを混ぜ込んだような奇妙な味の中で、脳髄は普段開いたことのない扉の奥へと…これは猟奇的な話なんかじゃない、あくまで感覚的なことだ、俺がなにかを書こうとするとき、身体の中ではそういった風景に近い感覚が繰り広げられている、その時でなければ開けられないドアがある、もしも事前に開いていたとしても、俺自身がその時でなければ潜ることは出来ないだろう―もっとも俺がそこを潜れなかったことなんておそらくは一度もないけれど―簡略化して語るならすべてのパーソナルなしきたりを滅茶苦茶にするということだ、
[次のページ]
戻る   Point(1)