数式の庭。─前篇─/田中宏輔
まざまな視点から同時に眺めるこの数式の花は
もちろん
場所場所によって
さまざまな表情を見せるのだ。
わたしの顔が
さまざまな角度から見ると
さまざまに異なったものに見えるように。
*
それは
数と記号の偽物だった。
数と記号に擬態した偽物から後ずさりながら
ただちに退却しなければならないと
わたしは思った。
ゴム状に固体化したエクトプラズムの綱が
わたしの足にまとわりついた。
あたりを見回すと
数多くのわたしが、たちまち
エクトプラズムの網に捕らわれていった。
とても濃いエクトプラズムに覆われた
花壇を眺めている
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