数式の庭。─前篇─/田中宏輔
 
るように見えるのだが
じつは数式自体は変形も展開もしていないのである。
目のまえの数式の花が、別の数式の庭に移動し
それと同時に、別の数式の庭から
別の数式の花が移動してきて
目のまえに現われるということである。
つまり、数式の花は不変であり
数式の庭も不変であり
相対的に見れば
ただ、それらが移動しているという
それだけのことなのである。
数式の花が、なぜつぎつぎと転移するのか
わたしが興味があるのは、その点だ。
なぜ、数式の花が
ある数式の庭から別の数式の庭へと転移するのか
そのなぞが、わたしの関心をひくのである。
その数式の花の
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