数式の庭。─前篇─/田中宏輔
 
花の美しさよりも
その変形と展開の見事さよりも。

 *

魂が胸の内に宿っているなどと考えるのは間違いである。
魂は人間の皮膚の外にあって、人間を包み込んでいるのである。
死は、魂という入れ物が、
自分のなかから、人間の身体をはじき出すことである。
生誕とは、魂という入れ物が、
自分のなかに、人間の身体を取り込むことを言う。

このようなことを考えたことがあるのだが
あらゆる集合における部分集合である空集合が
全体集合の部分集合である空集合に等しいのであるが
個々の人間を包み込んでいる魂もまた
それは、ただひとつの魂であるのではないかと
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