数式の庭。─前篇─/田中宏輔
 
い部屋で目を覚ましたかのような
そんな気がすることもある。

 *

目のまえにある数式の庭と
わたしの頭のなかにある数式の庭のあいだに
その中間状態とでも言うのだろうか
いや、もしかすると
中間状態ではないのかもしれない
目のまえで変形し展開していく数式の庭でもなく
わたしの頭のなかで繰り広げられるイメージでもない
数式の庭が
無数に存在しているのだろうと思う。
ときおり、その片鱗を
こころの目で垣間見るような気がするけれど
はっきりとこころにとどめておくことはできない。
いったいなぜだろうか。

 *

数式が変形し展開しているよ
[次のページ]
戻る   Point(16)