咲花とかえで/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
かえでが目を見張った。
配達してきた人物が、誰よりも見知った女性だったからだった。
一塁側の内野の金網の向こうに見える陽炎が、乗ってきた自転車を揺らしていた。
「びっくりしましたよぉ〜せんぱぁ〜い」
「……うん、ちょっとね」
「でも働いてる先輩のお母さん、ちょっとかっこよかったなあ……」
「何か……心境の変化かな?」
電車から降り歩く帰り道、そんな軽口を言うのがせいぜいで、あとはいつもみたいに弾む会話を交わすことが、お互いに出来なかった。
「……そろそろ咲花ちゃん家だね、じゃあ、ちょっと急ぐから!」
かえでは、タイミングを計って、少しだけ重い場を逃れる
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