タイトルを持たない、/パンジーの切先(ハツ)
のお母さんがいる家に憧れたという。だから自分は温かい家庭を作りたかったというのが彼女のいい分で、その相手としては父は不適だったという。
お母さんにはお母さんの話を聞いてくれるお母さんがいなかったの。その代わりとされた私は、母の話を随分たくさん聞いてきた。私は彼女の優れた愚痴聞き係として、かつ標的として生きてきた。十八で家を出たとき、家というのはこんなに静かで、誰からの制約も受けないのかと感動したものだ。
私は素早く、パスタをフォークに巻きつけた。もう私は母の標的になることはそうそうない。その役割を一手に引き受けていた父は、近頃、母に別れを切り出したらしく、今日もそれについて私は母から呼び出
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