タイトルを持たない、/パンジーの切先(ハツ)
 
ぎられていて、吐き出された吐瀉物がわたしというにんげんのかたちをして、おかあさんの前に立って、頭を垂れているだけだったのに。だが、そうやって、ある種の知恵を身につけることが、わたしがさなぎから、孵るということだった。

 泣くなんて、嘘だよ。私が私へ言い続けた言葉。泣いたらお母さんはもっとひどくなる。泣くなんて、嘘だよ。おかあさんは、そんな私の様子に気づくことなく、いまだに皿から、どろどろした吐瀉物を、大切な娘にするように抱き上げている。

 でも本当はちがう。お母さんは、私にお母さんのお母さんになってほしいんだ。母の母、私の祖母は、とにかく花が好きで、花を育てることにだけ精魂を込めている
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