幸福論/英田
のおじ様大好き」
「ぼくは嫌い」
「どうして」
「お姉ちゃんとケッコンするのは僕だもん」
恋人にまた会うときには、なんだか予感というようなものがある。ふと、ただこれだけの日々、ただこれだけの自分ではというような不満が覚えられてばかばかしい気持ちになりかけます。けれども考えるとその気持ちもまた馬鹿らしくおもう。こうして互い違いに胸に浮かぶことを打ち消すさまは、ちょうど闇の夜空に浮かんでは消える打ち上げ花火でしょうか。好きでもない男と婚約するまえの青い憂鬱な気持ち、わたしの心に赤い血を通わせる恋人をおもう気持ち。二つの気持ちが打ち上がっては消えをくりかえし過ごしていると、貧血もち
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