幸福論/英田
体が邪魔です。半径3メートル以内の世界のすべてを愛おしみ抱きしめる腕が力む。決してけがれることのないこの私のしあわせの絶対領域であり最小単位の恋愛、わたしはこの夜が終わりをつげるころに、自分の手でこの幸福にさよならをいう。
十一時ぴったりに彼の住むアパートの部屋に着くと食事を簡単にすましてしまいます。そのあとレンタルビデオ屋で映画を借りて部屋に戻る。部屋の壁が薄いのでTVにシーツをかけてテントみたいにしてその中で映画をみます。わたしと彼はシーツにすっぽりと包まれたなかでお互いの身体をよせあわせる。
「これはランボーだ」
「男が死んでも女は残って生きて行く」
「そういう映画」
彼はなにも
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)