花散る儚さは/積 緋露雪00
花散る儚さは人を蠱惑して已まぬ。
故に桜に象徴されるやうに
その尋常ならざる散り際に
人は美を見てしまふのかもしれぬ。
私はどうも舞ひ散る桜の花びらは
血吹雪に見えてしまふのだ。
桜の樹の下には死体が埋まってゐるとは
梶井基次郎の言葉であるが
私もまた、さう思ふ人間である。
さうでなければ、
桜が人を惹きつけて已まぬ筈はない。
血吹雪の異様な美しさに人は魅せられて
呑めや歌へやのどんちゃん騒ぎを桜の樹の下では出来るのだ。
其処には血腥い匂ひが満ち満ちてをり、
それが興奮剤となって人は痴れる。
それは儚い宴の後を人が知ってゐるからに過ぎぬ。
花咲く桜は既に人の心の中で
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