花散る儚さは/積 緋露雪00
 
中では散り始めてゐて、
それは正しく死の匂ひそのもので、
どんちゃん騒ぎは、だから、異様に盛り上がる。
もう使ひ古されたものいひだが、
死の衝動が人を生かしてゐる。
それを体感せずには人は生きられぬ哀しい生き物なのである。
故に絶えず死を反芻しながらしか一瞬も生きられぬ。
だから尚更、私は桜の花吹雪は血吹雪に見えてしまふ。
さう思へたからこそ私は桜を愛でることが出来るやうになったのだ。
花の散り際はおしなべて美しい。
その美に突き動かされるやうに
私は生の衝動を憶える。
花は儚い故に人を狂はせる。
それが人として正しい花に対する姿勢なのだ。
花狂ひに徹してこそ人は生き生きとする。
世阿弥は『風姿花伝』をものにしたが、
それもまた、花狂ひの為せる業だったのだ。

桜の樹の下には死体が埋まってゐて、
散る花びらは血吹雪の別称で、
だから、花は人を酔はせて、
人は痴れる。
――ええじゃないか。
と、踊り狂へ!

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