鏡像 【改訂】/リリー
 
暮らしだった母親には、
 ケアマネージャーとも相談して在宅介護から認知症高齢者を対象とする小規
 模なグループホームへ入所してもらう事に踏み切ったのだ。

  橋の歩道で左側をすれ違って行く数台のヘッドライト。学生だった時、一
 人親の母を病で亡くし現在も独居の私には、かつて就職したことのあった某、
 養護老人ホームでの遠い記憶が、この時脳裏に浮かんできた。その敷地内に
 植っていた一本の桜木を
 「ああっ!」
 と、驚喜の声をあげ見つめた日の自分を今も、忘れずにいるのだ。



  第一章 「メモワール?」


  路面に陽は差しながらも青ざめて乾いた風の吹く朝。
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