いんとろだくしょん&アレグロ?/朧月夜
 
大切な、わたしたち二人の宝石だったんです。
 果林は、時どきその箱を撫でて、
「思い出がつまってる」と、つぶやきました。
「ねえ。どこからどこまでが思い出で、そのあと夢なの?」
「分からないよ。……夢は、これから現実になることじゃない?」
 わたしは彼女の答えが、おぼろではなくて、希望なのだと思えました。
 果林はたしかに音楽をその手に採ったのでした。なにかが輝いて、彼女の心のなかに今再びあったからです。
「ねえ。わたしたちって、知らず知らずのうちに変わっていくんだね。知らないあいだに変わってしまうから、そのことを知らないのね」
「なに言ってるの? 茜さん」
「わたしたちは知らな
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