ひとりのメモ/由比良 倖
 
さ。

 心が水ならいいと思う。水の流れや、氷の結晶は、いつも個性的で美しいから。水にはきっと意識なんて無いけれど、水は自分自身を使って、意識で考えるよりも、ずっと美しい形状を表現出来る。僕の思考では真似の出来ないこと。
 僕の細胞とディスプレイが、指先とキーボードを経て、繋がっている感じが好きだ。でも今は、脳で考えた言葉を、ただ機械的に打ち込んでいるだけだと感じる。僕の細胞は衰弱している。乾きに向かっている。脳がうるさい。痛みが欲しい。

 指先が自然に語り始めるまでは決して書かないこと。脳を使うのではなくて、指先が踊り出すように、自然に書けるのが理想。ピアニストがピアノを奏でるように
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