入退院後の日記/由比良 倖
と狂いそうで、ますます精神を張り詰めさせると、時計の針の動きは意地悪いみたいに遅くなる。こんな夜にも、平和に眠っている人たちがいる、ということが、遠い遠いおとぎ話みたいに思える。僕は絶対に眠れないことが分かっている。そんな風にして、丸二晩を過ごした。昼間は、元気な振りをすることに集中していると、点滴や採血や診察や食事で、時間が細かく分割されるので、多少は時間が早く過ぎる。それに何より、昼間は音楽が聴けた。ヘッドホンの中は、僕のいつもの住み家だ。愛する音楽たち。食事は吐き気との戦いだったけれど。
これがあと一晩続いたら自分を保てないと思って、せめて退院の目途だけでも付けて欲しいと、昨日、昼食
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